平成18年4月26日(水)開催 全日遊連 全国理事会における
警察庁生活環境課 鶴代 隆造 課長補佐講話(概 要)ぱちんこ営業に係る射幸性の抑制の推進について
1 業界の取組みの現状
平成16年7月から、遊技機の射幸性の抑制や不正改造の防止を目的とした改正規則等が施行され、その経過措置期間が満了するまで残り1年少々となりました。また、違法行為に対する罰則の強化等を目的とした改正風営法が間もなく施行されます。貴団体においては、これらの改正の趣旨を踏まえ、遊技機の射幸性の抑制、不正改造事犯の防止、違法な賞品買取りの抑止に積極的に取り組んでこられました。
遊技産業健全化推進機構の設立については積極的に議論をリードし、業界を挙げた不正排除の仕組みを構築されつつあります。また、不正に強い遊技機にするにはどのような点を改善すべきか、ホールが日々の点検確認を効果的に行うことができるようにするためにはどのような遊技機の構造にすべきかについて、メーカー団体等との協議を開始されました。さらに、関係団体と全メーカーの同意の下、いわゆるゴト行為や遊技機の不具合への迅速な対策を講ずるためのガイドラインを締結し、指定試験機関に申入れを行う予定と聞いています。これにより、ゴト行為等の発生に際してメーカーがホール団体に協力して迅速に対策を講じる責務が明確化するとともに、遊技機の性能に影響を及ぼすおそれがあるものの変更による対策についても指定試験機関の協力を得て迅速に対処することが可能となります。関係団体の協力関係が生み出した画期的なルールづくりであると評価します。
このほか、貴団体は、営業者の関与する違法な賞品買取りの根絶に努力されています。これは、今後、賞品の取りそろえの充実を推進する上で当然の前提となる重要な取組みと理解しています。また、改正規則に則った遊技機の入れ替えや中古機の適正な流通等を、他団体の協力を得ながら着実に進められています。さらに、のめり込み事案の防止についても具体的な対策を講じられています。
貴団体執行部及び事務局の努力と、それを支える各理事の協力の成果が着実に現れてきているものと認識しております。2 ルールの明確化
警察としては、こうした業界の健全化に向けた取組みを支援するため、営業者の守るべきルールの一層の明確化を図るとともに、不正業者の取締りに力を入れてまいります。
改正風営法の施行に伴う下位法令等の改正については、昨日、業界団体に対し、文書をもって説明したところです。特に重要な点としては、賞品の提供方法に関する「等価の物品」の意味について、「同等の市場価格を有する物品」をいい、「市場価格」とは、いわゆるディスカウントストア等を含む一般の小売店における日常的な販売価格をいうものであって、特別な割引価格はこれに該当しないことを明記しました。これにより、市場価格はデパートの販売価格や標準小売価格に縛られるとの誤解を解消できると思います。同時に、賞品となる物品の価格に不安な点があれば、複数の小売店における日常的な販売価格の裏付けをとるようにすれば良いことが分かります。なお、偽ブランド品は、市場に流通することが認められない物品であることから、そもそも、ぱちんこ賞品として提供できる市場価格を有する物品、すなわち「等価の物品」に該当しないことは明らかです。したがって、ぱちんこ営業者が、賞品となる物品の管理に関する義務を履行せずに偽ブランド品を賞品として陳列し、客に提供する場合には、賞品の提供方法の基準に違反し、取締りの対象になるものと考えられます。営業者にあっては、贋物をぱちんこ賞品として提供することのないよう一層の注意をお願いします。
また、遊技機の無承認変更違反に対する罰則の引き上げに伴い、遊技機の変更の解釈について一層の明確化を図りました。具体的には、軽微な変更の例示について疑義が生じる余地を排除するとともに、営業者側の便宜に配慮する余り、変更に係る営業者の手続きを分かりにくくしていた「届出も要しない変更」が認められる場合について、解釈運用基準に例示されている場合に限定することを明記しました。なお、この点の判断について不明な点があれば、必ず変更する前に警察に問い合わせていただくようお願いします。
さらに、18歳未満の者の営業所への立ち入らせについて、風営法第22条第5号は年少者を「客として」立ち入らせることを禁止しているものであり、それに該当しない場合にまで同号違反に問疑されるものではないことを明記しました。
このように営業者からの問い合わせや要望を踏まえ、ルールの一層の明確化に努めているところです。今後とも、風営法令の解釈運用について疑問や意見があるときは、積極的に問い合わせていただきたいと思います。3 ぱちんこ遊技の射幸性の抑制と健全な遊技環境の創出
(1) この公然と示されたルールの下で、ぱちんこ営業をどういうものにしていくか、どのような業界を創っていくかは、全て皆様に委ねられています。そして、業界においては、より健全で多くのファンに愛される業界に生まれ変わる方向で各種の取組みを進めています。しかし、そうした皆様の努力にも関わらず、ぱちんこ業界が変わってきた、あるいは、変わろうとしているという声はなかなか聞こえてきません。この点について、貴団体を始めとする業界団体の取組みを知っている私としては残念でなりません。同時に、このままでは業界の再生が立ち行かなくなるのではないかと懸念します。
貴団体は、射幸性をあおり少数のヘビーファンを取り合う営業を続けていては業界の明るい将来は描けないとの危機感から、遊技機の射幸性を抑制し、遊技そのものの面白さで手軽に遊んでもらえる営業への転換を目指していると承知しています。この業態転換は、客1人当たりの売上げの低下を伴わざるを得ないため、その円滑な遂行には多くの客に来店してもらうことが必要となります。このためには、国民に広く業界が変わろうとしていることを知ってもらい、ぱちんこ店に足を運んでもらえるようにしなければなりません。そのため、貴団体は、「エンジョイ・パチンコ・パチスロ」キャンペーンの展開を考えていると聞いていますが、未だ国民の理解と十分な支持を得ることができておらず、その見通しも立っていない現況を心配に思います。
そこで、このキャンペーンについて、検討してみてはどうかと考えるところを述べさせていただきます。議論の参考としていただければと思います。
(2) まず、このキャンペーンを成功させるためには、その趣旨・目的を業界関係者間で共有することが必要です。その趣旨・目的は既に述べたとおりですが、重要なのは、皆様の社会に貢献する気持ちだと思います。単に、皆様の取組みが、自分達の営業が立ち行かなくなったからファン拡大のために経営戦略を変えただけだと受け取られるようでは、本来の意味で地域に愛される営業にはつながらないでしょう。業界に対する非難を高めてしまった過去を真摯に反省し、多くの方に安心して楽しんでもらえる娯楽場を提供するのだという遊技場営業者の社会的使命を関係者間で共有しなければ、キャンペーンもうまくいかないでしょうし、国民の支持は得られるはずもありません。
もちろん、こうした業態転換の成功は、営業者に大きなプラスをもたらしてくれると考えます。国民から「最近のぱちんこ営業は健全な娯楽に変わってきたなあ」と実感されるようになれば、社会的評価を獲得することにつながります。射幸性だけを頼りに、少数のヘビーファンに飽きられないようにと遊技機を頻繁に入れ替える。それでは、遊技機代を稼ぐために働いているとの錯覚を抱くような営業へと追い込まれるだけです。また、競争に生き残るため、射幸性を上げようと不正行為に手を出す者も出てきます。キャンペーンの成功は、こうした健全とは言えない状況から脱却することにつながります。自分達は国民に健全な憩いの場を提供しているのだと己の職業に誇りを持てるようになります。たくさんのライトファンに愛される営業へ脱皮すれば、それほど遊技機の入れ替えは必要なくなるかもしれません。むしろ、馴染みの遊技機を設置しておく方が、客には評判が良い状態になり、自然に遊技機の寿命は延びてくるものと予測されます。そうした明るい将来を思い描いて前進していくことができるのではないでしょうか。
(3) こうしたキャンペーンの趣旨や意義を十分踏まえた上で、名称については今一度検討されてみてはいかがでしょうか。業界が変わろうとする方向性を国民に知ってもらうことが重要であり、そのことがストレートに伝わるような分かりやすい名称にすべきです。同時に、業界自身が目指す方向性を明確化し、退路を断つ意味でも大切だと思います。「エンジョイ」で業界が何を目指そうとしているのかが明確化するのか。「エンジョイ」は意味が曖昧で、射幸性を高めることを「エンジョイ」と受け取る人もいるのではないか。射幸性を抑える、すなわち、「少ないお金で楽しく遊べますよ」というメッセージが明確に伝わるか。そういう観点から、名称を再考してみてはいかがでしょうか。
(4) 次に、その名称を用いてキャンペーンを一生懸命宣伝しても、いわゆる「遊べる遊技機」が営業所に設置されていなければ、国民に分かってもらえるはずはありません。キャンペーンを知った客が営業所に行ってみたが遊べる遊技機がないとなると、騙されたと反感すら買うことになります。何より、その種遊技機の開発が不可欠です。
この点について、ホールからは「メーカーが安価な遊べる遊技機をつくらないから導入が進まない」との意見が主張され、メーカーからは「遊べる遊技機はホールが買わないから作らない」との反論がなされます。何とかして、こうしたジレンマを打破しなければなりません。営業者の皆様が、自分達の目指す業界を創りたいと思うのであれば、今こそホールのリーダーシップを発揮する時です。
そもそも「遊べる」とは何かを具体的に定義しなければなりません。これを明確化しなければ、メーカーとしてもどういう遊技機を開発、製造すれば売れるのか分からず、結果としてメーカーの開発を促すことができません。業界の再生のために、あるべき遊技機はどのようなものなのか。どのぐらいのお金で何時間費やせるかを目安に決めることも一考です。パチンコから足が遠のいているファンに再び来店してもらうためには、いくらの料金でどのくらいの時間を楽しめれば満足してくれるのか。それを目安に「遊べる」遊技機を定義してはどうか。もちろん、ぱちんこ遊技は内部抽選の確率に左右されますが、数千円の投資で2、3時間は遊技し続けることが50%以上の確率で可能な遊技機であれば相当に射幸性の低い遊技機であると考えられます。そうした遊技機を作ろうとすれば、自ずと大当たり確率を上げざるを得ません。また、賞球数についても、短時間で玉・メダルがなくならないように配慮しなければなりません。同時に、射幸性を徹底的に抑制する方向を打ち出すことで、開発の方向性も、ゲーム性の幅を広げたり、チューリップや羽物といった遊技機のバリエーションを豊富にしたりする方向に向かうはずです。このように低料金で初当たりを引け、かつ、すぐに玉・メダルがなくならない時間消費型の遊技機であれば、初心者や高齢者も楽しむことができるのではないでしょうか。また、結果として数千円を投資しても、客は遊技自体を楽しんだ料金として納得できるのではないでしょうか。こうした遊技機であれば、一部の人間だけが大量の玉・メダルを獲得することにならず、比較的多くの人がそこそこの勝ちを享受できることになるので、健全な娯楽場の雰囲気を創出することが期待できます。
(5) また、射幸性の抑制を実現するためには、そうした遊べる遊技機を思い切って導入しなければなりません。遊べる遊技機の需要があるとみればメーカーも開発を加速するので、積極的な導入は遊べる遊技機の開発促進にもつながるはずです。
もちろん、ホールとしては、射幸性の低い遊技機であれば価格も低く抑えてもらわなければ困るはずです。この点については、当方からも、部品や遊技機枠の共通化など遊技機価格を抑制する努力をメーカー団体にお願いしているところです。メーカーにおいてもリース方式の導入など遊技機代の抑制への配慮がみられ始めました。しかし、遊技機価格は、本来、需要と供給で決まるものです。メーカー団体に働きかけ、例えば、少なくとも改正規則の経過措置期間が満了する頃までは遊べる遊技機を中心に開発・販売することを決議してもらう。また、射幸性の低い遊技機について型式試験を優先的に行うよう指定試験機関に要請するくらいの積極的な取組みをしてもらう。多種多様な遊べる遊技機の開発を促すことでメーカー間の競争を促せば、価格の低減につながるはずです。さらに、遊べる遊技機についてのホールの注文を団体で取りまとめる。「これくらい注文するから、このくらいの価格で販売してくれ」「こういうスペックの遊技機をこれくらいの価格で販売できるよう開発、製造してくれ」と各メーカーにかけあう。このように、貴団体もあらゆる手を打つべきです。
4月11日に開催された関係団体の協議の場で配布したとおり、現時点において既に相当数の射幸性が低い遊技機が開発、販売されています。そして、メーカー団体によれば、それらについて再生産が可能とのことです。「メーカーが開発したら」などと悠長なことを言っている場合ではありません。今から、価格協議を含め、あらゆる手段を講じつつ、積極的に遊べる遊技機を導入していく必要があるのではないでしょうか。
遊べる遊技機の導入促進は、単なる呼びかけだけではうまく進まないかもしれません。工夫が必要です。目先の利益を優先し、遊べる遊技機を導入する余裕はないという意見があるかもしれません。こうした意見を主張する営業者にまで遊べる遊技機を設置しろと強制することはできません。たとえ自主規制であっても、自由な競争を過度に制限するような取組みは適当ではないでしょう。そうではなく、遊べる遊技機を導入し、業界の変革をリードする営業者がメリットを享受できるような形でキャンペーンを実施することが重要なのではないでしょうか。キャンペーンの名称や内容について「射幸性の抑制」の趣旨を明確化すれば、キャンペーンの宣伝は、遊べる遊技機を導入したホールの宣伝となります。また、例えば、各営業所の遊技機設置台数の10%は遊べる遊技機を導入しようと決議し、その目標をクリアした店からキャンペーンのシンボルマークを宣伝に活用して良いとするとか、20%、30%入れたホールは特別にホームページやポスター等で「遊べるホール」として公表、宣伝してやるとか。業界の再生に貢献するホールのメリットになる方向でキャンペーンを展開すれば、自ずと遊べる遊技機の導入が促進されるかもしれません。
(6) 業態の転換は簡単ではないでしょう。ホールから足が遠のいているファンやパチンコを敬遠してきた人に店へ足を運んでもらうことは容易なことではありません。ましてや、パチンコに対する不健全なイメージや批判的な考え方を持っている方に健全化に向けた取組みを理解してもらうことは並大抵のことではありません。一旦思いこんだイメージを刷新することの困難さを想像してください。経過措置期間満了まで1年以上あるからと言っているようでは客を増やすことなどできないのではないでしょうか。時間はありません。明日から目に見える改革を実行に移さねば間に合わないと思います。
以上、遊べる遊技機としてぱちんこ遊技機を念頭に話をしましたが、回胴式遊技機についても同じことが言えます。徐々に新基準適合機が市場に投入されていますが、入れ替えはほとんど進んでいません。経過措置期間満了ぎりぎりまで旧基準機で粘り、その後新基準機に変えていくのが営業戦略との声も聞かれます。そうした考え方で、来年の夏を迎え、いきなり遊技機の射幸性が低下しても大丈夫ですか。経営への負担を考慮して激変緩和措置が定められていますが、その期間を有効に活用しようとせず、激変を迎えることを選択されるのでしょうか。徐々に業態転換を実現し、ファンの嗜好を変えていくことも考えなくてはなりません。また、パチスロについても、徹底的に射幸性を抑制した単純で分かりやすい遊技機を開発しても良いのではないでしょうか。新たなファン層の獲得につながるかもしれません。
(7) 最後に、キャンペーンを進めるに当たっては、出来る限りお金をかけないよう工夫していただくことが望ましいと考えます。そもそも、このキャンペーンは業界改革を実現するためのものです。この改革の過程で営業者には遊技機の入れ替えなどの負担がかかるはずです。キャンペーンを理由に更に負担を増して業態転換自体がうまく進まなくなるようでは本末転倒です。そこで、例えば、キャンペーンの宣伝は、ホール、遊技機メーカー、販社、周辺機器メーカーが各自の宣伝を行う中でキャンペーンのタイトルやシンボルマーク等を入れるようにする。報道関係者の方にもキャンペーンの趣旨を理解してもらい、積極的に取り上げてもらう。もちろん、各取組みを遂行するには業種の垣根を超えた協力が不可欠です。誰が何をいつまでにどのように行うのか詳細かつ具体的に詰め、関係団体が緊密に連携して即実行に移し、業界を挙げた迫力ある一大キャンペーンを展開していただきたい。4 全日遊連への期待
業界の構造的な改革には大きな困難が伴います。しかし、困難を乗り越え、それを成功させることができれば、明るい未来への礎を築くことができると確信します。中途半端な取組みで終わることなく、徹底的に射幸性を抑えた営業への転換を進めていただきたい。皆様が、業界のあるべき姿の構築に貢献され、業界が社会的評価を獲得できるようになることを期待します。
以上